2012年9月 飲食専門の求人・転職サイト、グルメキャリーの特集ページに「隠れ家ダイニング ゆう庵」が紹介され ました。 以下は、内容を転載させていただいています。

厳しく尖っていた修業時代。いまも全力投球

ランチタイムの後のアイドリングタイムに「こんにちは!」と、タオルで汗を拭いながらおだやかな笑顔でキッチンから出てきた岩楯氏は、いかにも心身ともに健康そうで、ひと仕事やり終えた充実感にみなぎっていた。忙しさをものともせず、いやむしろ逆風さえも楽しんで乗り越えてしまいそうなタフな経営者の印象を受ける。
すし店を営む父親の背中を見て育ち、割烹、炉端焼き、居酒屋など、さまざまな和食業態で腕を磨いてきた岩楯氏。店舗の規模も、チェーン展開をしている大型店や商業施設内のオープニング店舗など、多彩な現場を経験してきた。それらを単なるスキルや知識を積み上げるステージとして捉えるよりも、将来、強くしなやかな筋肉体質の店を創業するための血となり肉となるよう、その場そのときを全力投球してきた。とくに、企業の本部で営業部長を務めた5年間では、空手の黒帯保持者である強靭な身体でさえ、深刻な体調不良に陥ってしまったほど仕事に没頭した。
「あの5年間は完全に包丁を捨てました。居酒屋の多店舗展開をしている企業だったのですが、立地調査などの店舗開発に関わることや人事のこと、仕入れ業者との打ち合わせなどを任されました。全身全霊で会社のことを24時間考えていましたね。周囲のスタッフにもすごく厳しかったです。まさに仕事の鬼(笑)。いま思えば、包丁をもたなかったあの時期がいちばん尖がっていたかもしれませんね」
新橋で物件と出会い、独立したのが2008年の夏。スケルトンから造作した自分の店「ゆう庵」は、さまざまな経験を通して積み上げてきたアイデアの集大成でもある。

チェーン店にはマネのできない宴会を提案

「客単価4~5000円の大人のダイニング」がコンセプトのひとつ。そこに、もうひとつ「宴会を取れる店」という方向感をオープン当初から狙っていた。
居酒屋激戦区の新橋にあって、個人店でありながら「宴会」を差別化の武器として考えたのだ。そこには、経験豊かな料理人としてのスキルももちろんあるだろう。しかし、スキル以上に岩楯氏のアイデアや企画力が大きな魅力となって集客を呼んでいるのだ。
まず、宴会の時間を3時間に設定した。これはチェーン店では、なかなかマネのできないサービスではないか。
さらに「飲み放題」の内容がスゴイ! ハイボール、地酒5種類をはじめ、ビールや焼酎、梅酒など、割り方のバラエティを総合すると100種類ものドリンクを楽しめるのだ。

(内容続き)チェーン店にはマネのできない宴会を提案
希少な酒「十四代」も飲み放題に入っている。
「最近人気なのが『月・火限定コース(5000円)』です。9品の料理とデザートコースで、もちろん3時間、飲み放題つきとなります。うちでは大皿料理は出しません。そして熱いものは熱いうち、冷たいものは冷たいうちに。当たり前のことをきっちりやっています」
チェーン店では体験できない宴会のスタイルを提案し、幹事の強い味方となって、きめ細かな料理とサービスを提供することで、しっかりとリピーターを掴んでいる。
「個人で来店された方が気に入ってくれて、宴会もやってくれる、というのが通常のパターンだとしたら、うちの場合はその逆。つまり、いきなり宴会をやっていただいて、それがきっかけで個人やプライベートでリピートしていただいているんですね。とてもありがたいことです」
それにしても、こういったアイデアや企画力は、いつどのようにして湧いてくるのだろうか。
「いやいや、すべて私が考え出しているわけじゃないんです。酒屋さんや魚屋さんとのちょっとした雑談の中にアイデアって隠されているんですよね。お米屋さんや、税理士さんといったおつきあいのある人からも、さまざまなアイデアをいただいています。いま働いてくれているスタッフの中には、以前、私がいちばん尖がっていた時代、仕事の鬼だったころのスタッフもいます(笑)。店は、ひとりじゃできない。人に支えられているんですよね」

仮説を立てたら、何度も検証して答えを出す

岩楯氏には、新しいビジネスのヒントを感じ取るための高感度のアンテナが立っている。いつでもどこでも、そのアンテナは情報やヒントを追い求める。
「24時間、仕事のことを考えています。トイレに入っているときでもね(笑)。ポケットにはいつもメモ帳があって、気がついたことを書き留めるようにしています。食べ歩きに出ることも多いですね。そこで気になった料理はすぐに店に戻って、私なりのアレンジを加えて試作してみます。そうやって手を動かしていると、また違った角度から新しい料理のアイデアが湧いてくることもあるんです」
消費税のニュースひとつを取っても、それを他人事のようには聞かない。自分の仕事の中で、そのニュースがどんな影響を及ぼすのかをきちんと分析する。それも岩楯氏のアンテナの機能なのだ。
「ただ、思いつきだけで突っ走るようなことはしません。自分の中である

(内容続き)仮説を立てたら、何度も検証して答えを出す
仮説を立てたとしたら、それをアタマの中で何度も検証して、熟成させて、本当にそれが最善の答えかどうか、を見極めるようにしています」と、経営者としての冷静な視点を忘れない。
そうやって時代の流れを敏感に感じ取っている岩楯氏のアンテナには、新しい業態イメージが共鳴しはじめている。
「会社としての強い基盤をつくっていきたいですね。そのためには、攻めと守り、バランスよく人を配置して戦っていく必要があります」
立ち止まることは、後退することに等しいと考える岩楯氏。「ゆう庵」にさらなるアイデアと企画力を取り入れ、時代を見据えた新しい業態開発へのチャレンジも、いまはじまろうとしている。